交通事故について弁護士に相談すると

1 交通事故 相談から各種手続きの流れ

交通事故の相手方に損害賠償請求をお考えの際、弁護士に依頼した場合にどのような流れで相手方に損害賠償請求を行っていくかについて、ご説明します。

なお、加入している任意保険に弁護士費用特約が付帯している場合、相談料、着手金及び報酬金等の弁護士費用は保険から支払われます。相談の前に保険会社に弁護士費用特約の有無をご確認いただくと良いでしょう。

(1) 相談

・相談予約
当事務所では、お電話で面談相談の予約をいただき、事務所での面談相談を行います。入院中などの場合、別途費用をいただき、出張相談も可能です。

・相談料
弁護士費用特約を利用した場合、相談料は、基本的に30分5400円とさせていただいています。通常、今後の見通し等をご説明する限りでは相談自体は1時間程度で終わることが多いように思います。

・お持ちいただきたい資料
ご相談の際には、交通事故証明書や、相手方や保険会社とのやりとりについての書類、損害状況のわかる見積書をお持ちいただけると助かります。また、委任契約書や委任状を作成することもあるので、印鑑(認め印可)をお持ちいただいた方が良いでしょう。

(2) 受任

相談で、相手方らに請求できる見通しが立ち、相手方への損害賠償請求を依頼いただける場合には、委任契約書や委任状を作成します。

ここで、弁護士費用についてご説明します。弁護士費用は、着手金と報酬金からなり、その他に必要経費として実費をお預かりします。着手金や報酬金は、契約書締結の段階で定め、請求する金額に応じて、請求金額の「○%」を着手金とし、回収できた金額の「○%」を報酬とするとの定め方をすることが多いです。

着手金・・・依頼いただく際にお支払いいただくお金。
報酬金・・・いわゆる成功報酬。事件終了後にいただくお金。
実費 ・・・印紙代、通信費、交通費等の実費に充てるために数万円程度をお預かりします。なお、この実費は、事件終了後精算し、残金はお返しします。

委任契約書や委任状を作成をもって、正式に交通事故事件を受任したことになり、相手方に弁護士が受任したことを知らせる受任通知を発送します。

(3) 各手続き(任意の交渉から訴訟まで)

・示談交渉
相手方とまだ損害賠償請求等についてほとんど話し合いがなされていない場合、受任通知を送って、相手方や保険会社と、示談交渉を行います。双方の言い分を出し合って、お互いに納得できる場合には、交渉のみで示談ができることもあります。

示談ができる場合には、示談書や和解書を作成します。

・被害者請求・異議申立
交通事故により傷害を負った場合、示談や和解の前に、後遺障害がないかの認定を第三者的な立場の自賠責調査事務所から受ける必要があります。相手方の任意保険会社も後遺障害の認定手続きの仲介を行ってくれますし(事前認定といいます)、一方で、被害者自身が後遺障害の認定を直接、自賠責調査事務所に対して申請することもできます(被害者請求といいます)。事前認定の場合、資料収集の手間は省けますが、どのような資料を提出するかの判断を相手方に任せてしまうことになるので、被害者請求を行うほうがよいこともあります。

なお、調査事務所の決定に対しては、異議申立を行うことができます。

・訴訟
交渉で合意に到らない場合、最終的には訴訟を提起することになります。
事故によって発生した損害かという因果関係、どちらにどのくらい非があるかという過失割合、先ほど述べた後遺障害の評価で見解が対立する場合には、訴訟が長期化する可能性もあります。

2 損害(物損と人損)

交通事故で発生する損害は、大きく分けて自動車の損傷などの物損と、ケガの治療費や後遺障害慰謝料など体の傷害(ケガ)を基礎とする人損に分けられます。

(1) 物損

自動車の損傷についての賠償額は、修理費用が原則です。ただし、修理見積額が、車両の時価と売却代金の差額に諸費用を加えたものを上回る場合には、経済的に修理不能(経済全損)とされ、買い換え差額と諸費用が賠償額とされます。
なお、同種の車両の時価は、オートガイド社が毎月発行するオートガイド自動車価格月報(レッドブック)等を参考に算定されます。
また、修理の費用は、事故との因果関係が認められる相当な修理費用に限られ、全塗装は認められにくく部分塗装は認められやすい傾向にあります。同様に、板金修理が可能な場合は、パネル交換は認められにくい傾向にあります。

・いわゆる評価損(事故前の車両価格と修理後の車両価格の差)は、一般的に認められるわけではありません。高級車の新車に近いものの場合には、修理費の1、2割が認められることがあります。

・代車料は、日常的に必要な場合は認められる傾向にあります。自動車通勤等の場合は比較的認められやすいといえます。しかし、判例では、従前マイカー通勤をしていてもも、公共交通機関など代替交通手段がある場合に代車を認めない判例もあります。

(2) 人損(傷害と後遺症)

ア 症状固定と後遺症
事故による傷害を受けて、治療を続けてもこれ以上治癒しない状態を症状固定といいます。症状固定となった場合には、以後の治療費は賠償の対象とはなりません。

一方で、症状固定となった状態が、自賠責調査事務所によって後遺障害と認定される場合には、後遺障害等級によって慰謝料が支払われます。この後遺障害等級の認定を受ける手続きを被害者側で行うのが被害者請求、相手方任意保険会社が行うのが事前認定ということは先に述べたとおりです。

イ 損害の種類
・治療費
事故によって生じたケガの治療のための治療費は、損害賠償の対象であり、相手方が任意保険に加入している場合には相手方保険会社が立替え支払を行います。

しかし、むち打ち等の場合には3ヶ月から6ヶ月くらいで、相手方任意保険会社が治療打ち切りを打診することもあります(最近ではもっと短期間の場合もあります)。その場合には、医師に治療の目処を記載した診断書を作成してもらったり、打ち切られても治療を受けたい場合には健康保険をつかって一時立て替えをする必要があります。一時的に立て替えた治療費は、症状固定後に慰謝料などとあわせて請求することができますが、不相当に長期にわたる治療費等は支払われないこともあります。立替払をしてでも治療を継続けるべきか、症状固定かは、医師と相談をして決める必要があります。

なお、請求時に必要ですので立替払をした治療費の領収書は大切に保険しておいて下さい。

・休業損害
ケガによって、働けない場合、休業損害も損害賠償の対象です。
1日あたりの基礎収入(直前3ヶ月平均)に日数をかけて計算します。一方で、最低限の保障を趣旨とする自賠責保険の基準では休業損害は1日5700円とされており、保険会社によってはこの金額を基礎に休業損害を提示してくることもありますが、この金額以上の休業補償の金額を請求することができます。
なお、有給を取得し、実際には休業していない日分も休業損害は請求できます。また、実際には稼働していない専業主婦でも、全年齢平均の賃金額を基礎に休業損害を請求することができます。

・逸失利益
後遺障害による、労働能力の低下の程度、収入の変化、将来の昇進・転職・失業等の不利益の可能性、日常生活上の不便等を考慮して算定されます。この算定にも、後遺障害等級が何級と認定されるかが重要な意味を持ちます。

・慰謝料(傷害)
入院や通院についても慰謝料が支払われます。入院や通院の期間に比例して増えるのが原則ですが、必要性のない治療が続いた場合は、不相当な部分は慰謝料の算定の基礎とされないことがあります。なお、接骨院にしか通っていない場合には、慰謝料算定の基礎となる通院期間として、実際の通院期間の全てがを認められないこともありますので、接骨院などと並行して定期的に整形外科などの病院に通うことが重要です。

・慰謝料(後遺症)
後遺症等級によって、慰謝料が異なります。何級と認定されるかが賠償額が大きく異なりますので、重篤な後遺障害が残る場合には、相手方保険会社に資料収集を任せる事前認定ではなく,主体的に資料収集が可能な被害者請求をしたほうがよいこともあります。

3 弁護士に依頼するメリット

交通事故について、弁護士に依頼するメリットについて説明します。

(1) 人損に関しては賠償額が増えることが多い

損害賠償の際に、考慮される基準は3つあります。

3つの基準とは、自賠責保険の基準、任意保険会社が内部で定めている基準、裁判で認められる基準です。

自賠責保険の基準は、強制加入により最低限の保障をするとの趣旨から導かれた基準にすぎません。最低限の保障なので、一番低額な基準です。

また、任意保険会社の基準も、各保険会社が利益を出すために内部で定めた基準にすぎません。自賠責基準と裁判基準の中間くらいの基準です。

被害者が実際にどのような損害を負っているかという、被害の損害に着目した基準は、裁判を起こした際に認められる基準のみです。
この3つの基準の内、被害者本人が交渉する際には、自賠責基準や保険会社基準での和解を提示されてしまいます。一方で、任意保険会社も、弁護士が代理人になった場合には、訴訟をされるリスクを考え、裁判所の基準に近い水準での和解を提案してきます。賠償額が増額されるので、この点は弁護士に依頼するメリットといえるでしょう。

特に、後遺障害等級の認定については、高い等級の後遺障害が疑われる場合には、弁護士が早期に関与して、適切な診断書を書いてもらうなどして、高い認定を受けるメリットは大きいといえます。

(2) 煩わしい手続き、精神的な負担からの開放

手続きの進め方の知識や、過失割合等の法的な知識がない状況で、相手方と効果的に交渉し相当な水準での和解をすることは事実上極めて困難であり、相当の手間と時間をかける必要があります。また、ケガの治療を継続しながら、交渉等の手続きを進めることは精神的にも大きな負担となります。

弁護士に依頼することにより、煩わしい手続きや精神的な負担から解放され、治療に専念できるというのも大きなメリットです。

(3) デメリット

一方で、弁護士に依頼するデメリットもあります。まずは、弁護士費用がかかるという点です。当事務所の場合、原則として、次のような弁護士費用をいただくことになります。

経済的利益が300万円以下の場合
着手金8%、成功報酬16%
300万円を超え3000万円以下の場合
着手金5%+9万円、成功報酬10%+18万円
3000万円を超える場合
着手金3%+69万円、成功報酬6%+138万円

しかし、自動車保険に弁護士費用特約が付帯している場合には、弁護士費用は保険会社が支払ってくれるので、デメリットはほぼないといえるでしょう。


家族信託について

皆さんは、「信託」や「家族信託」といった言葉を耳にされたことは無いでしょうか。遺言や後見でできないことをできる制度として、近時注目を集めている制度です。今回のコラムでは、こうした信託の概要についてご説明します。

1 信託とは

信託というのは、契約を結ぶなどして、ある人(委託者)が特定の人(受託者)に、一定の目的(信託目的)に従って、財産(信託財産)の管理や処分その他目的の達成のために必要な行為をするよう委託することを言います。

たとえば、土地を持っているがどう活用して良いかわからない人が、信頼できる土地の活用について詳しい人に管理を委託し、土地を活用することにより得られた利益を自分の子どもに渡してもらうということが考えられます。

この場合、
土地を持っていて管理を委託した人のことを「委託者」(いたくしゃ)
土地の管理を委託された人のことを「受託者」(じゅたくしゃ)
土地を活用することにより得られた利益を受け取る人のことを「受益者」(じゅえきしゃ)
と言います。

こうした委託行為は、契約(信託契約)や遺言によってすることができます。

2 信託の利用例

信託が利用される場面は様々ですが、例えば以下のような利用例が考えられます。

(1)障がいをもった子どもの生活の維持

Aには障がいをもった子どもBがおり、現在はBはAと同居し、AがBの生活費を出している。Aには自宅土地建物や一定額の預貯金、賃貸不動産などがあるが、自分の死後にBがそれらを管理して生計を立てていけるかを心配している。

このようなケースでは、成年後見を利用することも考えられますが、Bが後見を利用できる状態(事理を弁識する能力を欠く常況)にない場合には、成年後見を利用することはできません。そこで、Aが自宅土地建物や金銭、賃貸不動産などを信頼できる第三者に信託し、管理や運用をしてもらって、毎月そこから得られた利益をAの生前はAに、Aの死後はBに渡してもらうということが考えられます。

(2)後妻から前妻との間の子への財産の承継

Cには前妻Dとの間に子Eがいるが、Eは既に成人し、自分の自宅を持っている。Cは現在Fと再婚して同居しているが、Fとの間に子どもはない。したがって、Cの死後は自宅を一旦はFに承継させたいが、Fも死亡した後にはEに承継させたい。

このようなケースは遺言書で対応するのは困難です。そのため、自宅土地建物を第三者に信託し、Cの生前はCが、Cの死後はFが自宅土地建物を利用できるものとし、Fの死後はEが自宅土地建物を取得するというスキームを作ることが考えられます。

3 信託の問題点

信託では遺言や後見でできないことをすることができる可能性がありますが、逆に遺言や後見ではできるが信託ではできないということもあります。そこで、遺言や後見も合わせて利用を検討する必要があります。

また、信託をする場合には、税金のことを考慮した上でスキームを作らないと思わぬ課税をされることもありますので、注意が必要です。

以上、信託の概要を説明しましたが、実際に信託を利用しようと思うと、どのような内容にするかを記載した契約書などを作成する必要があり、その内容は非常に複雑で専門的なものになります。

信託について相談をしたいという方は、是非一度、名駅総合法律事務所にご相談ください。


借りていたお金に対する消滅時効の援用

最近,一部の貸金業者や債権回収会社が,裁判所に訴訟を起こしているケースのご相談が多数あります。

しかし,貸金業者が,貸付先(借りた人)に対して,貸したお金を返してくれと言える権利は,基本的に5年で消滅時効にかかります。

具体的には,最後に返したときから何もなく5年以上経過していた場合,貸金業者の貸したお金を返してくれといわれても,消滅時効であると反論すれば(法律的には,「消滅時効の援用」といいます),貸金業者のお金を返してもらう権利が消えてしまいます。

しかし,消滅時効には例外もあり,貸金業者の求めに応じて一部でも(1円でも)弁済をした場合には消滅時効がリセットされてしまいます。

また,5年を経過していても,貸金業者が裁判所に訴えを提起し,借りていた人が裁判で特に反論もせずに判決となってしまった場合も,消滅時効がリセットされてしまいます。

最近は,貸金業者(債権回収株式会社も含む)が,5年の消滅時効にかかっていても,消滅時効のリセットを目的に訴訟を提起することが増えてきました。

そして,借りた人が裁判所からの封筒を開けるのが怖い,封筒を開いてみても理解ができないといった理由で裁判を放置したことで,貸金業者の権利が復活してしまい,破産せざるを得なくなることも増えています。

 

貸金業者(サラ金業者)や債権回収株式会社から文書が来たり,裁判所から文書が来るなどした場合には,貸金業者や裁判所から来た書類をご持参のうえで,迷わずに弁護士に相談してください。

消滅時効を援用するという内容証明郵便や答弁書を作成することで,問題が一気に解決することがあります。

 

借金,債務などで何をして良いのかをお困りの方は,名古屋駅前の名駅総合法律事務所に一度お気軽にご相談ください。


ドライブレコーダーの記録による立証

1,はじめに

最近ではドライブレコーダーの普及が進み,交通事故を原因とする損害賠償請求の交渉や訴訟においても,証拠としてドライブレコーダーの記録が出る機会が増えました。そこで,今回は,ドライブレコーダーの記録と交通事故の事案での立証について説明したいと思います。

2,立証が可能な事実

まず,交通事故の事案で,ドライブレコーダーの記録によって立証が可能な事実としては,以下のものが考えられます(『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 下巻(講演記録編)』2015年(平成27年)58頁参照)。

①信号機の色

②相手方車両のヘッドライト点灯の有無

③合図の有無やタイミング

④急ブレーキ,急ハンドルの有無

⑤一時停止場所での一時停止の有無

⑥速度,減速の程度やタイミング

⑦停車や追い越しの場所やタイミング

⑧走行位置

⑨接触の有無

⑩衝突物の視認可能性

⑪道路周辺の状況

いずれも過失の有無や過失割合の判断に影響を与える事実ですが,当事者の言い分が異なると,立証が困難になることが多々あります。もっとも,ドライブレコーダーに記録されている映像があれば,その映像によって直接事実が認定できることがあります。また,仮に立証したい事実そのものがドライブレコーダーに記録されていなかったとしても,映像によって明らかになる周辺の客観的な事実から立証したい事実を推認できることもあります。

3,解決事例

当事務所で,ドライブレコーダーの記録を利用して解決した事例として,③合図の有無やタイミングが争点になった交渉事例があります。

その事例の事故態様は,直進中に進路変更した車両が,その後方から直進していた車両の側面に衝突したというもので,進路変更した車両が,進路変更の前に合図を出していたか否かが争点となりました。

当事務所の依頼者は,進路変更車両の後方から直進していた車両の運転者でしたので,その車両に設置されていたドライブレコーダーの映像を確認しました。すると,進路変更車両が進路変更前に合図を出してはいるものの,合図を出してから3秒経過する前に進路変更しているため,法令(道路交通法53条1項,道路交通法施行令21条)上は,進路変更前に合図を出したといえない場合だということが分かりました。

そこで,ドライブレコーダーの記録を保存したDVDを相手方に送るとともに,上記法令を引用し,進路変更前に合図があったとはいえないと主張したところ,相手方がその主張を認めました。その後は,依頼者にとって有利な過失割合で解決をすることができました。

4,最後に

以上の通り,交通事故に巻き込まれ紛争になってしまっても,ドライブレコーダーの記録があれば,水掛け論のような不毛なやり取りをすることなく,直接事実を立証し,早期かつ有利に紛争を解決することができることがあります。そのため,車両にドライブレコーダーを付けることには十分なメリットがあると考えられます。

ただ,ドライブレコーダーに記録された映像がある場合でも,上記解決事例のように,法令の確認・検討を踏まえた上でなければ有利な主張ができるか分からないこともありますので,判断に迷った際は,弁護士への相談もご検討ください。

以 上


アスベストによる健康被害と救済手段について (3)

国との和解手続きについて

アスベストによる健康被害を受けたアスベスト工場の労働者やその遺族の方は、国を相手取って国家賠償請求を提起した場合に、一定の要件を満たせば、国と裁判上で和解をして賠償金を受け取ることができます。厚生労働省のHPによると、和解の要件は次の3点です。

①昭和 33 年 5 月 26 日から昭和 46 年 4 月 28 日までの間に、局所排気装置を設置すべき石綿工場内において、石綿粉じんにばく露する作業に従事したこと。

②その結果、石綿による一定の健康被害を被ったこと。

③提訴の時期が損害賠償請求権の期間内であること。

今回は、この和解の要件について解説します。

和解の要件についての解説

まず、国との和解を考える際の出発点となるのが、上記の要件②のアスベストによる健康被害を被ったことです。アスベストによる健康被害とは、石綿肺、肺がん、中皮腫、びまん性硬膜肥厚を意味します。なお、これらの病気と診断された方は労災申請や石綿救済法による救済の対象にもなります。

これらの病気と診断されたら、アスベストの健康被害救済制度に詳しい弁護士にご相談された方が良いでしょう(なお、これらの病気の発症前でも、アスベストを扱った労働者を対象とする重篤な症状発現前の早期発見早期治療のための健康管理手帳という制度もあります)。

アスベスト問題に詳しい弁護士をご存じなければ、法テラスに連絡をすれば、各地のアスベスト問題に取り組む弁護団の紹介をしてくれるはずです。

 

次に要件①について説明します。

国との和解は、アスベスト製品を製造、加工する工場で働いた方(やそのご遺族)を対象としてます。そのため、労災の認定を受けた方すべてが、裁判上の和解の手続きの対象となるわけではありません。

また、アスベスト製品を製造加工する工場の中でも、「局所排気装置を設置すべき」工場であることが必要です。ここで、局所排気装置とは、アスベスト粉じんを吸い込むフード、空気を清浄化する装置、ファンなどの排気のための装置、これらをつなぐダクトなどからなる装置です。局所排気装置を設置すべきだったといえるか否かは、具体的にどんな作業を行っていたかによって判断されるので、詳細な聴き取りが必要です。

そして、昭和33年5月26日から昭和46年4月28日までの間に、先に述べたような工場で働いていたことが必要です。期間が限定されているのは、最高裁が、この期間内には国が適切な規制をしてこなかったことを違法だと判断したためです。

 

また、要件③で、提訴の時期が損害賠償請求権の期間内であることも必要ですが、この点はケースバイケースなので、ご相談の際に弁護士にご確認ください。

 

なお、平成29年10月に、厚生労働省が和解手続きの周知のためにリーフレットを送付しています。リーフレットの送付対象者は労災認定やじん肺管理区分認定を受けておられる方を対象としているので、リーフレットが送付されていない方でも、先に述べた要件を満たせば国との和解手続きの対象者です。

さいごに

以上が、和解をするための要件ですが、実際には、裁判を提起しなければならないこと、原則としてアスベストによる健康被害を受けていることの証拠として労災認定を受けている必要があるなど、弁護士の援助が不可欠です。

名駅総合法律事務所には、アスベスト・じん肺被害救済東海弁護団所属の弁護士もおり、訴訟提起の実績もあります。また、和解のための訴訟は弁護団所属の弁護士複数で担当します。名古屋駅から徒歩5分とアクセスの良い事務所です。アスベストの健康被害についてもお気軽にご相談ください。


遺言書を作りませんか

「遺言」「遺言書」という言葉は、皆さんも一度は耳にしたことがあると思います。そして、遺産相続で揉めないために遺言書の作成が有効であるという話を聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。

今回は、その遺言について説明したいと思います。

1 遺言とは

遺言とは、「自分の死後に一定の効果が発生することを意図した個人の最終意思が一定の方式のもとで表示されたもの」などと表現されます。

ざっくりと言えば、自分が死亡した際に、自身が持っていた財産を誰にどのように引き継がせるかを書いたものです。

遺言書を作成することで、遺言者の死亡後、遺言者の財産は、原則として遺言書の記載どおりに分けられることとなります。

2 遺言書の種類と方式

遺言書にはいくつかの種類がありますが、一般的に多く利用されるのは①自筆証書遺言と②公正証書遺言です。

(1)自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、遺言者が遺言書の本文、日付及び氏名を自分で書き、押印して作成する方式の遺言です。

自筆証書遺言は、何らかの用紙に自ら遺言の内容を記載すれば良いので、手軽に作成することができますし、遺言書の存在や内容を隠しておくことができます。

他方で、遺言書の本文全てを自書する必要があるため、多数の財産を誰に相続させるか逐一記載するのはなかなか大変です。また、方式不備で無効とされる危険性や、遺言書が発見されない危険性、偽造・変造される危険性があるなどデメリットも存在します。

これらの点については、現在、法改正の議論が進められており、その中では、自筆証書遺言の方式の緩和(相続財産を記載した目録については自書でなくても良いというもの)や、自筆証書遺言の保管制度を創設するという提案がなされています。

(2)公正証書遺言

公正証書遺言とは、遺言者が遺言の内容を公証人に伝え、公証人がこれを筆記して公正証書による遺言書を作成する方式の遺言です。

公正証書遺言は、専門家である公証人が遺言の作成に関与するため、方式不備による無効が考えにくく、また、遺言書が公証役場に保管されるため、偽造・改ざんの危険性が少ないというメリットがあります。

他方で、遺言書作成の費用がかかること、遺言の存在と内容が外部に明らかとなるおそれがあるというデメリットがあります。

3 遺言書の記載内容

遺言書では、個々の財産を誰に相続させるかの指定や、法定相続分と異なる相続分の指定、相続財産を相続人以外へ贈与(遺贈)することなどができるほか、子の認知などの身分上の事項を記載することもできます。

また、遺言書には、相続人に対するメッセージを記載することもできます(「付言事項」といいます)。付言事項は、法律的な効果は特にありませんが、遺言書作成の理由などを記載することで、相続人が遺言書の内容に納得しやすくなることがあります。

4 遺言の有用性と限界

以上のとおり、遺言書を作成することで、予め相続財産の分け方を指定することができ、遺産分割における紛争を未然に防ぐことが期待できます。また、以前本コラムでも記載したとおり、相続人の中に認知症の方がいるとスムーズに遺産分割をできなくなりますが、遺言が存在することにより、そうした手間を省くことができます。

一方で、遺言にも限界があります。例えば、遺言で指定することができるのは、基本的には遺言者が死亡時に所有していた財産を誰に承継させるかという話だけで、承継させた財産の扱いについて自由に決めることはできません。

例として、子どもがいない夫婦が先祖から相続した土地を所有している場合に、一旦はその土地を配偶者に承継させたいが、その後は、甥や姪に承継させたいと希望されるときは、遺言ではなく信託を利用した方が良い可能性があります。

信託については、今後のコラムで説明したいと思います。

5 さいごに

遺言書は、適切に活用すれば、争続防止や手続の円滑な進行にとても有効です。しかしながら、内容や書き方によっては、かえって紛争を招く原因ともなり得ます。

遺言書の作成をお考えの方は、ぜひ一度、名駅総合法律事務所にご相談ください。

遺言の相談につきましては、初回のみ30分無料でご相談いただけます。


アスベストによる健康被害その2

アスベストの健康被害と救済手段について】では,アスベストによる健康被害とその救済手続についてまとめさせていただきました。

この【アスベストの健康被害と救済手段について】のとおり,救済手段としては国家賠償請求を行うことができ,訴訟を提起すれば一定の条件の下,国が定める一律の和解基準に従って,賠償金を受け取ることができます。

そして,厚生労働省はアスベストで健康被害を受け,国家賠償請求訴訟の対象になり得る方々に対して,必要な手続を記載したリーフレットを順次発送するとのことです(外部リンク)。

国家賠償請求は,国を被告として損害賠償請求訴訟を起こすもので,そもそも国を相手方にしてどうやって訴訟を起こしたら良いのかについて不安が尽きないと思います。また,個人で訴訟提起をし,裁判手続をすることは,訴訟に不慣れな方にとっては,時間も労力もかかるものです。

そこで,厚生労働省からのリーフレットを受け取られましたら,アスベストによる健康被害をできる限り回復するお手伝いをさせていただきます。(もっとも,裁判上の手続では健康被害そのものを治すことはできませんので,金銭による補償を受けることが限度です)。

なお,国を相手方に訴訟をしますので,勤務先にご迷惑をかけるものではありません。

アスベスト(石綿)による健康被害でお困りの方,厚生労働省からリーフレットが届いた方で何をして良いのかをお困りの方は,名駅総合法律事務所に一度お気軽にご相談ください。


アスベストの健康被害と救済手段について

1 アスベストによる健康被害とその救済について

アスベストは、その粉じんを吸引すると、数十年後に、中皮腫や石綿肺などの病気を引き起こすことがあります。現在、高度経済成長時にアスベスト粉じんにさらされ吸引した方のアスベストによる健康被害が、大きな社会問題となっています。

そのようなアスベストを原因とする健康被害を受けた方は、救済を受けられる可能性がありますので、以下説明します。

2 どんな人がアスベストの健康被害に遭う可能性があるか?

欧州ではアスベストの危険性が早くから指摘され規制も迅速でしたが、日本では規制が遅れ、1960年代から高度経済成長期を中心に2000年代前半まで、アスベストは建物建材、配管やボイラーの保温材・断熱材、ブレーキなど、至る所で使用されてきました。アスベストは、意外な場所でも使われており、たとえば手術用のゴム手袋の滑りをよくするためのタルクや、小学校の理科室の実験道具にも使われてました。

また、アスベストの付着した作業着を洗っていたご家族や、アスベスト製品を扱う工場の付近住民の方がアスベストの健康被害に遭われたケースもあります。

保温・断熱作業に従事した方や、建設現場などアスベストを主に扱う職場にいた方だけでなく、身近なところにアスベストがあった方は、アスベストが原因の病気を発症したり、その兆候がないか、注意しておく必要があります。

3 アスベストの健康被害への救済手段にはどんなものがあるか?

アスベストが原因で発症する病気には、いくつかの種類がありますが、石綿肺、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚、肺がん、中皮腫のうち、一定の要件を満たしたものが救済の対象となります。

これらの病気にかかった方が、雇用された労働者や労災保険に特別加入をしていた個人事業主である場合には、療養費等の給付を受けられる労災申請をすることができます。労災申請に加えて、企業への損害賠償請求が可能なケースもあります。

また、特にアスベスト工場で働いていた方は、労災申請に加えて国に対して、国家賠償請求を行うことができ、訴訟を提起すれば一定の条件の下、国が定める一律の和解基準に従って、賠償金を受け取ることができます。

なお、これらの病気を発症する前でも、早期発見のために定期的に健康診断を受けられる石綿健康管理手帳を取得することもできます。

一方で、個人事業主や工場の近隣住民や労働者の家族など、労働者でなく労災の申請ができない場合には、石綿救済法に基づく補償を請求していくことになります。


以上が、アスベストによる健康被害の救済のおおまかな説明です。

アスベストの健康被害に伴う救済手段について、疑問のある方は、お気軽にご相談ください。


人身傷害補償特約について

1,はじめに~人身傷害補償特約とは

任意保険に加入している車両に搭乗中の事故で死亡したり傷害を負ったりした場合,ご自身の任意保険会社に対し,契約内容の範囲内で保険金を請求できる特約のことを言います。

2,人身傷害補償特約のメリット

この人身傷害補償特約がある場合,以下のメリットが得られます。

①加害者との示談成立前・訴訟終了前に保険金を受け取ることができる。

交通事故に遭った場合,通常は加害者と示談交渉するか加害者へ訴訟提起するかして賠償金を請求することになります。そのため,示談又は訴訟が終わるまで,内容によっては長期間,賠償金を受け取ることができないということもあります。もっとも,人身傷害補償特約があれば,その特約を使用して保険金を受領してから,不足分について加害者と示談や訴訟を続けることができます。

②過失割合にかかわりなく保険金を受け取ることができる。

人身傷害補償特約では,事故に関して自身に一定の過失があったとしても,過失割合に相当する部分について保険金を受け取ることができます。例えば,損害総額が300万円でご自身の過失が3割の交通事故の場合,210万円を事故の相手方から受け取り,残りの90万円について人身傷害補償特約を利用して回収できる可能性があります。

3,人身傷害補償特約を上手に利用するために

以上のメリットが得られる人身傷害補償特約ですが,人身傷害補償特約の請求の時期を,示談より先にするか後にするかによって被害者が受け取ることのできる賠償金・保険金の総額が変わってしまう可能性があるとも言われており,扱い方には注意が必要です。人身傷害補償特約のメリットを最大限得るためにも,交通事故に遭われた場合には,できるだけ早期に弁護士へ相談することをお勧めします。

以 上


家賃を払ってもらえないとき(その2)

4月4日のコラムで、アパートやマンションの借主が家賃を支払ってくれないときに、大家さんが取り得る手段として、「1 家賃を請求する方法」と、「2 退去を求める方法」の概要を説明しました。

今回のコラムでは、「2 退去を求める方法」について、もう少し詳しく説明します。

2 退去を求める

(1)はじめに

アパートやマンションなどの一室を人に貸すとき、貸主(大家さん)と借主は賃貸借契約を結ぶことになります。賃貸借契約では、様々な取り決めがなされますが、特に重要なのは、貸主は、賃貸借契約の対象物(アパートの一室など)を借主が使用できるようにする義務、借主は契約で決めたとおりに家賃を支払う義務です。

そして、借主がアパートなどを使用しているにもかかわらず家賃を支払わない場合、貸主として取りうる方法としては、借主との間で賃貸借契約を解除して、借主に退去を求めるという方法があります。

(2)具体的に退去を求める方法

具体的には、まず、借主に対し、「●月●日までに、未払家賃●●円を支払え。」などと未払家賃の支払いを求め(「催告」といいます)、それでも支払いが無い場合に、「賃貸借契約を解除する」旨の通知をします。

こうした催告や解除の通知は、別々に行うことも可能ですし、「●月●日までに、未払家賃●●円を支払わなければ、この書面で賃貸借契約を解除する」などと、1つにまとめて行うことも可能です。

また、これらの通知は、後で言った言わないの争いになることを避けるため、内容証明郵便で行うことが一般的です。

催告をしても未払家賃の支払いがなく、その後に送った解除の通知が借主に届いた場合、あるいは、「●月●日までに支払わなければ、この書面で契約を解除する」という通知が借主に届いているものの、指定の期限までに支払いが無い場合、原則として、賃貸借契約は解除されます。

しかしながら、解除により契約が終了したとしても、部屋の中のものを勝手に捨てるわけにはいきません。貸主としては、借主と交渉をして退去(部屋の明渡し)を求めることになります。

借主が、「いついつまでに出て行きますので、それまで待ってください」という場合には、「平成●年●月●日までに明渡します」というのを書面にしてもらった方が無難です。その際に、明渡し後に部屋に残っている物(残置物)について、所有権を放棄し、処分されても異議を述べない旨の一文を入れておけば、残置物があった場合でも、貸主自身でそれを廃棄し、後に、借主や連帯保証人にその処分費用を請求することができます。

借主が出て行こうとしない場合には、訴訟さらには強制執行という法的手段を取らざるを得なくなります。

(3)解除が有効か争いになるケース

最初に述べたとおり、借主が家賃の支払いをしない場合には、契約を解除することができますが、1回でも家賃の支払いが遅れたら、すぐに契約を解除できるという訳ではありません。賃料が不払いとなっている期間や金額、不払いに至った事情など諸々の事情を考慮して、貸主と借主との間の信頼関係が破壊されたといえる事情が無い場合には、契約を解除することはできません。たとえば、家賃の不払いが一月分である場合には、解除が無効となる可能性が高いでしょう。これは、契約書に「家賃の不払いが一月分でも生じた場合には、直ちに契約を解除できる」などと記載されていたとしても同様です。逆に、不払いが1年を超えるような場合には、他の事情にもよりますが、解除は有効とされる可能性が高いと思われます。

次に、催告をせずに契約を解除すること(無催告解除)が可能か、問題となるケースもあります。これも、不払いの程度や各当事者の態様、賃貸借契約書で無催告解除を定めているか否かなどの事情を踏まえて、有効か否か判断されますが、当然のことながら、催告がある場合に比べるとハードルは高くなります。

以上が、解除による退去を求める方法の概要です。

貸主ご自身で行うことももちろん可能ですが、交渉が必要であったり、法的な知識が必要となったりする場面も多々あります。

賃料を支払ってくれない借主への対応にお困りの方は、ぜひ名駅総合法律事務所にご相談ください。