遺留分減殺請求とは 2018年 12月 22日

1 遺留分とは

人が亡くなると相続が開始します。亡くなった人が預貯金や不動産などの財産を持っていた場合、それを誰かが引き継ぐことになります。遺言書があれば原則として遺言書のとおりに財産を分けることになりますが、その際に、一定の相続人に法律が最低限保障している取り分が「遺留分」です。

2 遺留分の割合

遺留分の割合は民法1028条により以下のように定められています。
①直系尊属のみが相続人である場合は、被相続人の財産の3分の1
②それ以外の場合は、被相続人の財産の2分の1
「直系尊属のみが相続人である場合」というのは、亡くなった人に配偶者や子ども、孫などがおらず、親や祖父母などがご存命の場合です。この場合には、相続人は親や祖父母などの直系尊属のみとなりますので、相続財産全体の3分の1が遺留分になります。
亡くなった人に配偶者や子ども、孫がいるような場合には、②にあたりますので、相続財産全体の2分の1が遺留分になります。
遺留分を有する人が複数いる場合には、法定相続分の割合で各々権利を有することになります。

例1:亡くなった人に配偶者と子どもが2名いた場合
法定相続分は、配偶者2分の1、子ども4分の1ずつ
遺留分は、配偶者2分の1×2分の1=4分の1
子ども2分の1×4分の1=8分の1

相続人が兄弟姉妹である場合には、遺留分はありません。

3 遺留分の請求

各相続人の相続した財産の価値が遺留分に満たない場合には、その相続人は遺留分の主張をすることができます。このような請求を遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)と言います。

遺留分減殺請求がなされると、遺留分を侵害していた部分について贈与・遺贈の効力が失われます。そして、遺留分減殺請求により取り戻された財産は、遺留分減殺請求をした者自身の固有財産になります。

例2:相続人が子Aと子Bの2名で、すべての相続財産を子Aに相続させるという内容の遺言書あり。
この場合、子Bの遺留分は4分の1になりますが、Bが遺留分減殺請求をすると、具体的には以下のような効果が生じます。

ケース1

相続財産:預金4000万円の場合
→子Bが遺留分減殺請求をすることで、預金1000万円がBのものになります。

ケース2

相続財産:評価額4000万円の不動産1筆の場合
→子Bが遺留分減殺請求をすることで、不動産が共有状態になります(Aの持ち分4分の3、Bの持ち分4分の1)

ケース3

相続財産:自社株400株(評価額4000万円)の場合
→子Bが遺留分減殺請求をすることで、全ての株について共有状態になります(Aの持ち分4分の3、Bの持ち分4分の1)
※Aが300株、Bが100株とはなりません。

現在の法制度の下では、以上のような結論になりますが、ケース2、ケース3では、共有状態が生じてしまい、不動産の処分や議決権の行使などの支障が生じるという問題点がありました。

そこで、平成30年の相続法改正により、遺留分減殺請求により金銭を請求できるという形に改正されました。そのため、平成31年(2019年)7月1日の施行日以降は、上記のように共有状態が生じてしまうという問題点が解消されます。

4 遺留分についてはぜひ専門家にご相談を

遺留分は、具体的に考えていくといろいろと難しい問題を含んでいます。
遺言書を作成する際や、亡くなった人が遺言書を作成していたという場合には、ぜひ名駅総合法律事務所にご相談ください。