4月4日のコラムで、アパートやマンションの借主が家賃を支払ってくれないときに、大家さんが取り得る手段として、「1 家賃を請求する方法」と、「2 退去を求める方法」の概要を説明しました。
今回のコラムでは、「2 退去を求める方法」について、もう少し詳しく説明します。
2 退去を求める
(1)はじめに
アパートやマンションなどの一室を人に貸すとき、貸主(大家さん)と借主は賃貸借契約を結ぶことになります。賃貸借契約では、様々な取り決めがなされますが、特に重要なのは、貸主は、賃貸借契約の対象物(アパートの一室など)を借主が使用できるようにする義務、借主は契約で決めたとおりに家賃を支払う義務です。
そして、借主がアパートなどを使用しているにもかかわらず家賃を支払わない場合、貸主として取りうる方法としては、借主との間で賃貸借契約を解除して、借主に退去を求めるという方法があります。
(2)具体的に退去を求める方法
具体的には、まず、借主に対し、「●月●日までに、未払家賃●●円を支払え。」などと未払家賃の支払いを求め(「催告」といいます)、それでも支払いが無い場合に、「賃貸借契約を解除する」旨の通知をします。
こうした催告や解除の通知は、別々に行うことも可能ですし、「●月●日までに、未払家賃●●円を支払わなければ、この書面で賃貸借契約を解除する」などと、1つにまとめて行うことも可能です。
また、これらの通知は、後で言った言わないの争いになることを避けるため、内容証明郵便で行うことが一般的です。
催告をしても未払家賃の支払いがなく、その後に送った解除の通知が借主に届いた場合、あるいは、「●月●日までに支払わなければ、この書面で契約を解除する」という通知が借主に届いているものの、指定の期限までに支払いが無い場合、原則として、賃貸借契約は解除されます。
しかしながら、解除により契約が終了したとしても、部屋の中のものを勝手に捨てるわけにはいきません。貸主としては、借主と交渉をして退去(部屋の明渡し)を求めることになります。
借主が、「いついつまでに出て行きますので、それまで待ってください」という場合には、「平成●年●月●日までに明渡します」というのを書面にしてもらった方が無難です。その際に、明渡し後に部屋に残っている物(残置物)について、所有権を放棄し、処分されても異議を述べない旨の一文を入れておけば、残置物があった場合でも、貸主自身でそれを廃棄し、後に、借主や連帯保証人にその処分費用を請求することができます。
借主が出て行こうとしない場合には、訴訟さらには強制執行という法的手段を取らざるを得なくなります。
(3)解除が有効か争いになるケース
最初に述べたとおり、借主が家賃の支払いをしない場合には、契約を解除することができますが、1回でも家賃の支払いが遅れたら、すぐに契約を解除できるという訳ではありません。賃料が不払いとなっている期間や金額、不払いに至った事情など諸々の事情を考慮して、貸主と借主との間の信頼関係が破壊されたといえる事情が無い場合には、契約を解除することはできません。たとえば、家賃の不払いが一月分である場合には、解除が無効となる可能性が高いでしょう。これは、契約書に「家賃の不払いが一月分でも生じた場合には、直ちに契約を解除できる」などと記載されていたとしても同様です。逆に、不払いが1年を超えるような場合には、他の事情にもよりますが、解除は有効とされる可能性が高いと思われます。
次に、催告をせずに契約を解除すること(無催告解除)が可能か、問題となるケースもあります。これも、不払いの程度や各当事者の態様、賃貸借契約書で無催告解除を定めているか否かなどの事情を踏まえて、有効か否か判断されますが、当然のことながら、催告がある場合に比べるとハードルは高くなります。
以上が、解除による退去を求める方法の概要です。
貸主ご自身で行うことももちろん可能ですが、交渉が必要であったり、法的な知識が必要となったりする場面も多々あります。
賃料を支払ってくれない借主への対応にお困りの方は、ぜひ名駅総合法律事務所にご相談ください。