家賃を払ってもらえないとき(その1) 2017年 4月 4日

 近時、相続税対策でアパートを建設される方も多いようです。

 新聞記事では、アパートを建設しても全ての部屋について入居者が決まらない空室のリスクの指摘がなされていましたが、他方で、入居者が約束通り家賃を払ってくれないというケースもあります。

 そのような場合には、どうしたらよいのでしょうか。

1 家賃を請求する

(1)本人に請求する

 まずは契約した本人(借主)に請求をします。ただ、うっかり支払い忘れていたという事情でもない限りは、すぐに全額支払ってもらえる可能性は低いのが一般的でしょう。支払いを一定期間猶予したり、分割で支払ってもらうという話し合いをすることも可能ですが、後々トラブルになる可能性がありますので、単なる口約束で終わらせるのではなく、書面を作るようにしましょう。なお、一度支払いを猶予したり、分割支払いの約束をすると、後になって一方的にそれを取り消すことは基本的にはできませんので、ご注意ください。

(2)連帯保証人に請求する

 賃貸借契約を結んだ際に、連帯保証人を決めている場合、その連帯保証人に対しても未払家賃を請求することができます。お金の無い人からお金をもらうことはできませんので、借主の財産が乏しいときは連帯保証人に請求することが効果的です。連帯保証人に請求することで、連帯保証人から借主に支払いを促してもらい、借主自身が支払うということもあります。

(3)その他の人への請求

 本人、連帯保証人以外の人には原則として請求することはできません。

 ただし、夫婦で居住しているアパートなどの家賃について、夫婦の一方(例えば夫)が契約の当事者となっている場合であっても、もう一方(例えば妻)に請求できる可能性があります(日常家事債務(民法761条)に当たる可能性があるため)。

2 退去を求める

 家賃を請求しても支払ってもらえない場合、借主に退去を求めることになります。

借主に「家賃の不払いが続いているので出て行って欲しい」と言って、借主が「はいわかりました」と退去してくれる場合は良いのですが、一般的には、「他に住むところが無い」「もう少しだけ待って欲しい」などと退去に応じてもらえないことが多いと思われます。

 そのような場合に、勝手に中の荷物を出して鍵を付け替えてしまうことは許されていません。

 そのため、まずは、借主に対して、未払の家賃を支払うように期限を決めて催告(支払を請求すること)をし、それでも支払わないという場合には、賃貸借契約を解除します。

 その上で、裁判、強制執行という法律に則った強制的に退去させる手段を使うことになります。

 こうした退去をさせる手段については、回を改めて本コラムで詳細に説明させていただきます。

 以上、家賃を支払ってもらえない場合に取りうる手段の概要を説明しましたが、家賃の請求については、弁護士名で請求することで支払ってくれるというケースもあります。また、法的手段を使って強制的に退去させるためには裁判所を利用する必要があり、ご自身でやろうとしてもどうしたら良いかわからないということもあると思います。

 家賃を払ってもらえずお困りの大家さんは、名駅総合法律事務所にご相談ください。