以前、当コラムにおいて、「特別縁故者に対する財産分与」のご説明をいたしました(本年5月20日付コラム参照)。
今回は、その前提となる相続財産管理人の話をしたいと思います。
相続財産管理人とは
人が亡くなると、その人の財産(預貯金、不動産、株式、借金など)は相続人に引き継がれます。しかしながら、その人に元々相続人(配偶者、子どもや孫、親、兄弟、甥姪)がいない場合や、相続人がいたとしても、その相続人が家庭裁判所で相続放棄の手続をしている場合は、財産を引き継ぐ人がいません。亡くなった方の財産は、そのまま放置されることになります。
しかしながら、そうすると、例えば、被相続人に借金があった場合、お金を貸している人は、お金を返してくれと請求することが出来ません。このようなケースでは、元々亡くなった人にお金が無い場合にはやむを得ないかもしれませんが、預貯金や売却できそうな不動産がある場合には、何とかしてそこから回収したいと考えるものです。このような場合に、家庭裁判所に相続財産管理人を選任してもらい、その相続財産管理人に対して請求することになります。
あるいは、上記のコラムでご説明した「特別縁故者」として財産分与を受けたいと考える場合も、相続財産管理人の選任が必要です。
相続財産管理人の選任・活動
上にも述べたとおり、相続財産管理人は家庭裁判所が選任します。ただし、裁判所が勝手に選任をしてくれるわけではなく、被相続人にお金を貸していた債権者や自分は特別縁故者だと考える人が、裁判所に選任の申立をする必要があります。なお、申立をする際に、裁判所に数十万円のお金を預けなければならないこともあります。
申立を元にして、家庭裁判所は相続財産管理人を選任します。相続財産管理人になるための資格などは特にありませんが、弁護士や司法書士などの専門家が選任されることも多く、当事務所の弁護士も何件か相続財産管理人に選任されています。
選任された相続財産管理人は、家庭裁判所の許可を得て、相続財産の中の不動産や有価証券などを売却するなど、相続財産の処分をします。他方で、法律の手続にしたがって、債権者や受遺者(遺言の中で相続財産の中から財産を譲り受けることになっている人)に支払をしたり、特別縁故者に対する相続財産分与の審判にしたがって特別縁故者に相続財産を分与するための手続をします。
債権者や受遺者に対する支払、特別縁故者に対する財産分与をしてもなお、相続財産に余りが生じる場合には、その余った相続財産は最終的に国庫に帰属することになります(具体的には裁判所の雑収入になります)。
生前、ご結婚されていない、子どもがいない、兄弟がいない、などのご事情から、今後は亡くなられた方に相続人がいないというケースも増えてくるものと思われます。司法統計によれば、相続財産管理人選任等の手続の申立は、昭和24年で56件であったものが、昭和30年に320件、昭和40年に910件、昭和50年に1822件、昭和60年に2567件、平成18年に1万1689件と増加を続け、平成27年には1万8568件になっています。
相続財産管理人に関するご相談は、名駅総合法律事務所へご相談ください。