1 はじめに
名駅総合法律事務所の小澤尚記が取り扱った,被相続人の従兄弟の関係にある特別縁故者に対する財産分与申立事件において,名古屋高等裁判所から財産分与を認める決定を得ました(なお,原審の岐阜家庭裁判所多治見支部では財産分与が認められなかった事案ですので,逆転決定です。)。
2 特別縁故者に対する財産分与とは?
相続人がいないまま亡くなった被相続人の遺産は,通常であれば最終的に国庫に帰属することになりますが,特別縁故者に対する財産分与は,国庫帰属の前の段階で,被相続人と一定の関係のあった方(特別の縁故のあった方)に対して,裁判所の判断によって,遺産の一部を分け与える制度です。
特別縁故者に対する財産分与はあまり件数のあるものではありませんが,少子高齢化にともない,お子様が無く,兄弟もいない方が増えてくると予想されますので,今後は増加してくると思われます。
3 特別縁故者とはどのような人か?
特別縁故者に対する財産分与は,亡くなった被相続人に相続人がいない場合で,かつ,全ての遺産を誰かに遺贈する旨の遺言書が残されていない場合,に検討するものです。
特別縁故者にあたる方は,
- ①被相続人と生計を同じにしていた方(内縁の配偶者など)
- ②被相続人の療養看護に努めた方
- ③その他特別の縁故があった方(相続権のない従兄弟など)
です(民法958条の3)。実際には,①~③が組み合わさることが多くなります。
4 特別縁故者に対する財産分与までの手続
特別縁故者に対する財産分与を求めて,財産分与の判断を得るまでは2年程度の時間が必要になります。
まず,相続人がいないまま亡くなった被相続人の遺産を管理する相続財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てることになります。
そのうえで,相続財産管理人が被相続人の借金などの債務を支払い,債務支払後も遺産が残っていれば,相続人を探す手続をして,最終的に相続人が現れなかった場合にはじめて家庭裁判所に財産分与の申立をすることができます。
家庭裁判所に財産分与を申し立てる場合には,被相続人の生前,被相続人とどういった関係にあり,なぜ特別縁故者と言えるのかを,できる限り具体的な資料を提出して,家庭裁判所に伝える必要があります。
そして,家庭裁判所が特別縁故者と認めれば,裁判所が一定額の財産分与を認めることになります。
小澤が取り扱った事案では,被相続人と生前一定の交流のあった従兄弟が,③その他特別の縁故があった方として財産分与が認められています。