ドライブレコーダーの記録による立証 2018年 2月 2日

1,はじめに

最近ではドライブレコーダーの普及が進み,交通事故を原因とする損害賠償請求の交渉や訴訟においても,証拠としてドライブレコーダーの記録が出る機会が増えました。そこで,今回は,ドライブレコーダーの記録と交通事故の事案での立証について説明したいと思います。

2,立証が可能な事実

まず,交通事故の事案で,ドライブレコーダーの記録によって立証が可能な事実としては,以下のものが考えられます(『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 下巻(講演記録編)』2015年(平成27年)58頁参照)。

①信号機の色

②相手方車両のヘッドライト点灯の有無

③合図の有無やタイミング

④急ブレーキ,急ハンドルの有無

⑤一時停止場所での一時停止の有無

⑥速度,減速の程度やタイミング

⑦停車や追い越しの場所やタイミング

⑧走行位置

⑨接触の有無

⑩衝突物の視認可能性

⑪道路周辺の状況

いずれも過失の有無や過失割合の判断に影響を与える事実ですが,当事者の言い分が異なると,立証が困難になることが多々あります。もっとも,ドライブレコーダーに記録されている映像があれば,その映像によって直接事実が認定できることがあります。また,仮に立証したい事実そのものがドライブレコーダーに記録されていなかったとしても,映像によって明らかになる周辺の客観的な事実から立証したい事実を推認できることもあります。

3,解決事例

当事務所で,ドライブレコーダーの記録を利用して解決した事例として,③合図の有無やタイミングが争点になった交渉事例があります。

その事例の事故態様は,直進中に進路変更した車両が,その後方から直進していた車両の側面に衝突したというもので,進路変更した車両が,進路変更の前に合図を出していたか否かが争点となりました。

当事務所の依頼者は,進路変更車両の後方から直進していた車両の運転者でしたので,その車両に設置されていたドライブレコーダーの映像を確認しました。すると,進路変更車両が進路変更前に合図を出してはいるものの,合図を出してから3秒経過する前に進路変更しているため,法令(道路交通法53条1項,道路交通法施行令21条)上は,進路変更前に合図を出したといえない場合だということが分かりました。

そこで,ドライブレコーダーの記録を保存したDVDを相手方に送るとともに,上記法令を引用し,進路変更前に合図があったとはいえないと主張したところ,相手方がその主張を認めました。その後は,依頼者にとって有利な過失割合で解決をすることができました。

4,最後に

以上の通り,交通事故に巻き込まれ紛争になってしまっても,ドライブレコーダーの記録があれば,水掛け論のような不毛なやり取りをすることなく,直接事実を立証し,早期かつ有利に紛争を解決することができることがあります。そのため,車両にドライブレコーダーを付けることには十分なメリットがあると考えられます。

ただ,ドライブレコーダーに記録された映像がある場合でも,上記解決事例のように,法令の確認・検討を踏まえた上でなければ有利な主張ができるか分からないこともありますので,判断に迷った際は,弁護士への相談もご検討ください。

以 上