国との和解手続きについて
アスベストによる健康被害を受けたアスベスト工場の労働者やその遺族の方は、国を相手取って国家賠償請求を提起した場合に、一定の要件を満たせば、国と裁判上で和解をして賠償金を受け取ることができます。厚生労働省のHPによると、和解の要件は次の3点です。
①昭和 33 年 5 月 26 日から昭和 46 年 4 月 28 日までの間に、局所排気装置を設置すべき石綿工場内において、石綿粉じんにばく露する作業に従事したこと。
②その結果、石綿による一定の健康被害を被ったこと。
③提訴の時期が損害賠償請求権の期間内であること。
今回は、この和解の要件について解説します。
和解の要件についての解説
まず、国との和解を考える際の出発点となるのが、上記の要件②のアスベストによる健康被害を被ったことです。アスベストによる健康被害とは、石綿肺、肺がん、中皮腫、びまん性硬膜肥厚を意味します。なお、これらの病気と診断された方は労災申請や石綿救済法による救済の対象にもなります。
これらの病気と診断されたら、アスベストの健康被害救済制度に詳しい弁護士にご相談された方が良いでしょう(なお、これらの病気の発症前でも、アスベストを扱った労働者を対象とする重篤な症状発現前の早期発見早期治療のための健康管理手帳という制度もあります)。
アスベスト問題に詳しい弁護士をご存じなければ、法テラスに連絡をすれば、各地のアスベスト問題に取り組む弁護団の紹介をしてくれるはずです。
次に要件①について説明します。
国との和解は、アスベスト製品を製造、加工する工場で働いた方(やそのご遺族)を対象としてます。そのため、労災の認定を受けた方すべてが、裁判上の和解の手続きの対象となるわけではありません。
また、アスベスト製品を製造加工する工場の中でも、「局所排気装置を設置すべき」工場であることが必要です。ここで、局所排気装置とは、アスベスト粉じんを吸い込むフード、空気を清浄化する装置、ファンなどの排気のための装置、これらをつなぐダクトなどからなる装置です。局所排気装置を設置すべきだったといえるか否かは、具体的にどんな作業を行っていたかによって判断されるので、詳細な聴き取りが必要です。
そして、昭和33年5月26日から昭和46年4月28日までの間に、先に述べたような工場で働いていたことが必要です。期間が限定されているのは、最高裁が、この期間内には国が適切な規制をしてこなかったことを違法だと判断したためです。
また、要件③で、提訴の時期が損害賠償請求権の期間内であることも必要ですが、この点はケースバイケースなので、ご相談の際に弁護士にご確認ください。
なお、平成29年10月に、厚生労働省が和解手続きの周知のためにリーフレットを送付しています。リーフレットの送付対象者は労災認定やじん肺管理区分認定を受けておられる方を対象としているので、リーフレットが送付されていない方でも、先に述べた要件を満たせば国との和解手続きの対象者です。
さいごに
以上が、和解をするための要件ですが、実際には、裁判を提起しなければならないこと、原則としてアスベストによる健康被害を受けていることの証拠として労災認定を受けている必要があるなど、弁護士の援助が不可欠です。
名駅総合法律事務所には、アスベスト・じん肺被害救済東海弁護団所属の弁護士もおり、訴訟提起の実績もあります。また、和解のための訴訟は弁護団所属の弁護士複数で担当します。名古屋駅から徒歩5分とアクセスの良い事務所です。アスベストの健康被害についてもお気軽にご相談ください。