遺言書を作りませんか 2017年 12月 1日

「遺言」「遺言書」という言葉は、皆さんも一度は耳にしたことがあると思います。そして、遺産相続で揉めないために遺言書の作成が有効であるという話を聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。

今回は、その遺言について説明したいと思います。

1 遺言とは

遺言とは、「自分の死後に一定の効果が発生することを意図した個人の最終意思が一定の方式のもとで表示されたもの」などと表現されます。

ざっくりと言えば、自分が死亡した際に、自身が持っていた財産を誰にどのように引き継がせるかを書いたものです。

遺言書を作成することで、遺言者の死亡後、遺言者の財産は、原則として遺言書の記載どおりに分けられることとなります。

2 遺言書の種類と方式

遺言書にはいくつかの種類がありますが、一般的に多く利用されるのは①自筆証書遺言と②公正証書遺言です。

(1)自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、遺言者が遺言書の本文、日付及び氏名を自分で書き、押印して作成する方式の遺言です。

自筆証書遺言は、何らかの用紙に自ら遺言の内容を記載すれば良いので、手軽に作成することができますし、遺言書の存在や内容を隠しておくことができます。

他方で、遺言書の本文全てを自書する必要があるため、多数の財産を誰に相続させるか逐一記載するのはなかなか大変です。また、方式不備で無効とされる危険性や、遺言書が発見されない危険性、偽造・変造される危険性があるなどデメリットも存在します。

これらの点については、現在、法改正の議論が進められており、その中では、自筆証書遺言の方式の緩和(相続財産を記載した目録については自書でなくても良いというもの)や、自筆証書遺言の保管制度を創設するという提案がなされています。

(2)公正証書遺言

公正証書遺言とは、遺言者が遺言の内容を公証人に伝え、公証人がこれを筆記して公正証書による遺言書を作成する方式の遺言です。

公正証書遺言は、専門家である公証人が遺言の作成に関与するため、方式不備による無効が考えにくく、また、遺言書が公証役場に保管されるため、偽造・改ざんの危険性が少ないというメリットがあります。

他方で、遺言書作成の費用がかかること、遺言の存在と内容が外部に明らかとなるおそれがあるというデメリットがあります。

3 遺言書の記載内容

遺言書では、個々の財産を誰に相続させるかの指定や、法定相続分と異なる相続分の指定、相続財産を相続人以外へ贈与(遺贈)することなどができるほか、子の認知などの身分上の事項を記載することもできます。

また、遺言書には、相続人に対するメッセージを記載することもできます(「付言事項」といいます)。付言事項は、法律的な効果は特にありませんが、遺言書作成の理由などを記載することで、相続人が遺言書の内容に納得しやすくなることがあります。

4 遺言の有用性と限界

以上のとおり、遺言書を作成することで、予め相続財産の分け方を指定することができ、遺産分割における紛争を未然に防ぐことが期待できます。また、以前本コラムでも記載したとおり、相続人の中に認知症の方がいるとスムーズに遺産分割をできなくなりますが、遺言が存在することにより、そうした手間を省くことができます。

一方で、遺言にも限界があります。例えば、遺言で指定することができるのは、基本的には遺言者が死亡時に所有していた財産を誰に承継させるかという話だけで、承継させた財産の扱いについて自由に決めることはできません。

例として、子どもがいない夫婦が先祖から相続した土地を所有している場合に、一旦はその土地を配偶者に承継させたいが、その後は、甥や姪に承継させたいと希望されるときは、遺言ではなく信託を利用した方が良い可能性があります。

信託については、今後のコラムで説明したいと思います。

5 さいごに

遺言書は、適切に活用すれば、争続防止や手続の円滑な進行にとても有効です。しかしながら、内容や書き方によっては、かえって紛争を招く原因ともなり得ます。

遺言書の作成をお考えの方は、ぜひ一度、名駅総合法律事務所にご相談ください。

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