アスベストの健康被害と救済手段について 2017年 10月 2日

1 アスベストによる健康被害とその救済について

アスベストは、その粉じんを吸引すると、数十年後に、中皮腫や石綿肺などの病気を引き起こすことがあります。現在、高度経済成長時にアスベスト粉じんにさらされ吸引した方のアスベストによる健康被害が、大きな社会問題となっています。

そのようなアスベストを原因とする健康被害を受けた方は、救済を受けられる可能性がありますので、以下説明します。

2 どんな人がアスベストの健康被害に遭う可能性があるか?

欧州ではアスベストの危険性が早くから指摘され規制も迅速でしたが、日本では規制が遅れ、1960年代から高度経済成長期を中心に2000年代前半まで、アスベストは建物建材、配管やボイラーの保温材・断熱材、ブレーキなど、至る所で使用されてきました。アスベストは、意外な場所でも使われており、たとえば手術用のゴム手袋の滑りをよくするためのタルクや、小学校の理科室の実験道具にも使われてました。

また、アスベストの付着した作業着を洗っていたご家族や、アスベスト製品を扱う工場の付近住民の方がアスベストの健康被害に遭われたケースもあります。

保温・断熱作業に従事した方や、建設現場などアスベストを主に扱う職場にいた方だけでなく、身近なところにアスベストがあった方は、アスベストが原因の病気を発症したり、その兆候がないか、注意しておく必要があります。

3 アスベストの健康被害への救済手段にはどんなものがあるか?

アスベストが原因で発症する病気には、いくつかの種類がありますが、石綿肺、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚、肺がん、中皮腫のうち、一定の要件を満たしたものが救済の対象となります。

これらの病気にかかった方が、雇用された労働者や労災保険に特別加入をしていた個人事業主である場合には、療養費等の給付を受けられる労災申請をすることができます。労災申請に加えて、企業への損害賠償請求が可能なケースもあります。

また、特にアスベスト工場で働いていた方は、労災申請に加えて国に対して、国家賠償請求を行うことができ、訴訟を提起すれば一定の条件の下、国が定める一律の和解基準に従って、賠償金を受け取ることができます。

なお、これらの病気を発症する前でも、早期発見のために定期的に健康診断を受けられる石綿健康管理手帳を取得することもできます。

一方で、個人事業主や工場の近隣住民や労働者の家族など、労働者でなく労災の申請ができない場合には、石綿救済法に基づく補償を請求していくことになります。


以上が、アスベストによる健康被害の救済のおおまかな説明です。

アスベストの健康被害に伴う救済手段について、疑問のある方は、お気軽にご相談ください。