法定相続分について 2016年 7月 7日

1 法定相続分とは

人が亡くなると相続が発生します。その人(被相続人)に複数の相続人がいる場合には、法律上、相続分が定められています(民法900条)。これを「法定相続分」と言います。

もっとも、被相続人が生前に遺言書を作っていた場合には、原則として、その人の相続財産(遺産)はその遺言書の内容にしたがって、分割されます。この場合に、遺言書に記載された分割割合が法定相続分と違っていても問題はありません(遺留分の侵害について問題になることはありえます)。

また、遺言書がなく、相続人全員で協議して遺産を分割(遺産分割協議)をする場合も、相続人全員が納得さえしていれば、遺産をどのような割合でどのように分けるかは自由です。この場合も法定相続分は関係ありません。

しかし、協議がまとまらず、調停によっても話し合いがまとまらない場合に、裁判所が分割方法を決める際には、裁判所は法定相続分を出発点として諸々の事情を考慮して分け方を決めます。

2 具体的な法定相続分

現在の民法が定めている法定相続分は以下のとおりです。

(1)相続人が配偶者と子どもの場合・・・配偶者 2分の1 子ども 2分の1

(2)相続人が配偶者と親の場合  ・・・配偶者 3分の2  親  2分の1

(3)相続人が配偶者と兄弟の場合 ・・・配偶者 4分の3 兄 弟 4分の1

注意が必要なのは(3)の場合で、被相続人に子どもも親もいないときには、兄弟が相続人になります。そのため、遺言書が無い場合、配偶者の方は、被相続人の兄弟と遺産分割協議をしなければならないことになります。

子どもや親、兄弟が複数人いる場合には、その中でさらに等分で分けることになります。

例えば、相続人が配偶者と2人の子どもの場合、法定相続分は配偶者2分の1、子どもはそれぞれ2分の1×2分の1で4分の1になります。

3 法定相続分の移り変わり

この法定相続分は、いつの時代も同じというわけではありません。

例えば、昭和55年改正前の民法では、配偶者と子どもが相続人の場合、配偶者3分の1、子ども3分の2とされていました。

また、以前は子どもの中で嫡出子(法律上の婚姻関係にある男女の間に生まれた子ども)と非嫡出子がいる場合に、非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1とされていましたが、平成25年9月4日に、最高裁判所が、そのような規程は憲法違反であるとの判断を示したことから、平成25年12月11日に改正された民法が施行され、そのような規定は無くなりました。

このように、法定相続分は時代の変遷によって変わっています。そして、近い将来、法定相続分が再び変更されるかもしれません。現在、法制審議会民法(相続関係)部会では、配偶者の法定相続分を従来より増やす方向での議論がなされています。このような改正の話が持ち上がったのは、現在の法定相続分が定められた昭和55年以降、高齢化社会が更に進展して、相続開始時点での相続人(特に配偶者)の年齢が従前より相対的に高齢化していることに伴い、配偶者の生活保障の必要性が相対的に高まり、子の生活保障の必要性が相対的に低下していることや、被相続人の財産形成・維持に対する配偶者の貢献を反映した遺産分割を実現すべきではないかという考え方を理由とするようです。

改正の具体的な内容については、改めて説明したいと思いますが、こうした話題を機に、一度、ご自身やご家族の相続についても考えてみてはいかがでしょうか。