慰謝料について(交通事故) 2016年 4月 26日

1,はじめに

慰謝料は,精神的損害(交通事故に遭って精神的に傷ついたこと)に対する金銭賠償で,交通事故の場合は,原則として,被害者が傷害を負って治療を受けた場合,後遺障害が残った場合,死亡した場合,がそれぞれ慰謝料請求の対象となります。他方で,物損を被ったことに対する慰謝料の発生は認められないのが原則です。

2,傷害慰謝料

交通事故に遭ってケガをしてしまったため,入院したり通院したりして治療を受けた場合,その精神的損害に対する金銭賠償として傷害慰謝料が発生します。

傷害慰謝料の額は,基本的には入通院期間を基準に算定されます。算定に使う基準はいくつかありますが,例えば、入院1か月の場合32~60万円,通院1か月の場合16~29万円などと定めた基準があります。傷害の部位や程度によっては基準額から傷害慰謝料が増減することがあります。

通院期間が長期にわたり,かつ不規則であったり通院頻度が極めて低かったりする場合には,慰謝料が高くなりすぎないように,通院期間を修正されることがあります(通院実日数の3.5倍程度の日数とされることが一般的です。)。また,他覚所見(レントゲン,CT,MRIなどから客観的に把握できる異変)のないむち打ち症に対する傷害慰謝料は,骨折など他の傷害に対して認められる傷害慰謝料よりも低額になっています。

3,後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は,治療を続けても将来の症状の改善が難しいと考えられる状態(この状態のことを「症状固定」といいます。)となった場合,その精神的損害に対する金銭賠償として発生します。

実務上は,損害保険料率算出機構が認定した等級を参考として,一定の基準に基づいて後遺障害慰謝料が算定されることが一般的です。例えば,後遺障害14級の後遺障害慰謝料については90~120万円とする基準があります。

なお,後遺障害の認定については,「後遺障害による逸失利益について」の記事をご参照ください。

4,死亡慰謝料

死亡慰謝料は,生命を失ったこと自体に対する精神的損害に対応した慰謝料です。死亡慰謝料についても,以下のとおり定めた基準などがあり,実務ではこうした基準を参考に,被害者ごとの個別事情も考慮したうえで死亡慰謝料を算定しています。

死亡慰謝料の基準例

一家の支柱の場合     2700~3100万円
一家の支柱に準ずる場合  2400~2700万円
その他の場合       2000~2500万円

5,物損を被ったことに対する慰謝料

修理費用や代車使用料などの物損自体の賠償が受けられれば精神的損害は解消されるという考え方から,原則として,物損を被ったことに対する慰謝料は認められていません。

6,最後に

交通事故の事案での慰謝料の一般的な考え方は以上のとおりです。実際に事故の相手方や保険会社と交渉した際に,提示された慰謝料額が低いのではないかとか適正な賠償額なのか分からないと思われた場合,弁護士が代理人となることで問題の大部分は解決しますので,相談もご一考ください。

以 上