後遺障害による逸失利益について(交通事故) 2015年 10月 31日

1,はじめに

今回は,交通事故により収入が減少した場合に問題となります,
後遺障害による逸失利益(後遺障害が残ったことで将来得られたはずの収入が得られなくなったという損害)についての記事を掲載します。
損害額が高額になりますので,争いになることがよくある論点です。

 

2,後遺障害

後遺障害とは,交通事故によるケガの治療が終わった後にも残っている身体的もしくは精神的な症状,障害のことをいいます。
交通事故の損害賠償を請求する場合の後遺障害は,将来の症状の改善が難しいと考えられる時期(この時期のことを「症状固定」といいます。)の問題です。

交通事故によるケガの治療を必要な期間続けるうちに,これ以上の治療を続けても症状が良くならない判断されると症状固定となります。
同じ収入の問題でも,治療中の収入の減少は休業損害と言われ(詳しくは「休業損害について」の記事をご参照ください),症状固定後は後遺障害による逸失利益の問題となります。

症状固定の状態かどうかは,通常は医師が診断して判断します。症状固定の診断を受け,
後遺障害診断書が作成されましたら,損害保険料算出機構の自賠責損害調査事務所による等級認定を受けるというのが一般的な後遺障害認定の流れです。

この事前認定の手続は,加害者側保険会社を通じて行う場合と被害者から直接行う場合があります。

 

3,後遺障害による逸失利益の計算式

後遺障害認定後,損害額の計算をします。基本的な計算式は以下のとおりです。
(計算式)
基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

このうち基礎収入(年収)は,通常,源泉徴収票や確定申告書に記載されている収入を用いたり賃金センサスの平均値を参照したりして認定します。

労働能力喪失率は,一般的には,労災補償の際に使われている労働能力喪失表に記載された数値を当てはめて計算します。
後遺障害の程度が重くなるほど,労働能力喪失率は大きくなります(一番軽い後遺障害14級の場合は5%で,最も重い後遺障害1級の場合は100%と設定されています。)。

以上が後遺障害による逸失利益(後遺障害が残ったことで将来得られたはずの収入が得られなくなったという損害)の一般的な考え方ですが,ご相談を受けていると,納得のいく後遺障害の認定が受けられないという事態になっていることがあります。

この場合は,必要な資料を収集し,自賠責損害調査事務所による等級認定に異議を出したり,
訴訟を提起して妥当な等級認定を求めたりする対応が必要ですが,代理人を立てずにこうした対応をするのは難しいことが多いです。

また,交通事故の加害者側と交渉しても,損害額について,計算過程を明示されず結論として非常に低い賠償額しか提示されないという場合や,基礎収入(年収),労働能力喪失率,ライプニッツ係数のどれかについて不適切な数値が当てはめられている結果,低額の提示となってしまっている場合もあります。

こうした場合,必要な資料を集め,根拠を整理して反論し,適切な賠償額となるよう交渉する必要がありますが,やはり被害者ご本人だけでの対応では難しいところがあります。

以上の他にも,後遺障害による逸失利益については,いろいろな問題が発生する可能性がありますので,疑問やお悩みがありましたら,名駅総合法律事務所にご相談いただけますと幸いです。