遺産分割協議ができないとき 2015年 10月 5日

人が亡くなると相続が開始します(民法882条)。

 

その人が不動産や株式などの財産(遺産)を持っていた場合、遺言書が無ければ相続人同士話し合って遺産をどう分けるか話し合うことになります(これが「遺産分割協議」です。)。
しかしながら、当事者同士で話し合いができない場合には、裁判所の手続を利用することになります。

 

裁判所の手続の一つが「調停」という手続です。調停というのは、簡単に言うと、裁判所が間に入った形での話し合いです。原則として、当事者全員が家庭裁判所に行き、基本的には相続人同士が顔をあわせることなく、裁判所の調停委員にそれぞれの言い分を伝えながら調整をしてもらい、分け方を決める方法です。ここで話し合いがまとまると(調停成立)、「調停調書」という遺産分割協議書に代わる書類が作成されます。

 

この調停手続を経ても話し合いがまとまらない場合(調停不成立)、もう一つの裁判所の手続である「審判」に移行します。審判手続では、裁判所は当事者の意見を聞きつつ、最終的に遺産をどう分けるか裁判所が判断します。

 

ところで、裁判所の司法統計によると、平成26年中に調停が成立し、あるいは審判がなされた件数は8710件で、そのうち、遺産の総額が1000万円以下のケースが2784件、1000万円を超え5000万円以下のケースが3731件だったようです。合計するとおよそ全体のうちのおよそ4分の3が、遺産総額が5000万円以下ということになります。

遺産分割資料(第53表)はこちら。

 

他方で、「平成26年中に調停が成立し、あるいは審判がなされている」ということは、平成26年以前に相続は開始していたということです。しかし、当時は、例えば相続人が2人の場合でも、遺産が7000万円以下の場合には基本的に相続税がかかりませんでした(基礎控除の範囲内のため)。

 

また、相続税法が改正された平成27年以降でも、相続人が2人であれば遺産が4200万円以下の場合、3人いるときは4800万円以下の場合には基本的に相続税がかかりません。
つまり、遺産分割で揉めて調停や審判になるケースの多くは相続税のかからないケースと言えます。

 

こうした実情ですから、例えば、遺言書の作成など、相続時のことを考えて行動する際には、相続税対策だけではなく、相続で揉めないための対策をとることがとても大切です。