高齢者による遺産分割 2015年 3月 24日

人が亡くなると相続が開始します(民法882条)。
相続の開始によって亡くなった方(被相続人)の財産(遺産)は配偶者や子どもなどの相続人に引き継がれますが、
遺言書が無い場合、遺産をどう分けるかは相続人間で話し合う必要があります。これが遺産分割協議です。

ところで、最近は長寿の方が増え、90歳、100歳を超えて亡くなる方も珍しくありません。
その場合、相続人の年齢は配偶者であれば90~100歳、子どもであれば60~80歳になりますが、
遺産分割協議をする段階で、相続人の一部が認知症である可能性も十分に考えられます。

相続人の中に認知症の方がいる場合、
その方が物事を理解して判断する能力を常に欠いている状態であると、
その方自らが遺産分割協議をすることはできません。家庭裁判所に後見人の選任を申し立て、
選任された後見人が遺産分割協議に参加することになります。

この手続を経ないと、不動産の登記など財産の名義を相続人に移すこともできません。
そして、相続税の申告が必要なケースでは、後見人選任の申立て→遺産分割協議→相続税の申告という
一連の流れを原則として被相続人の死亡から10か月で行わなくてはならなくなります。

このような不都合を回避する方法の一つとして、遺言書の作成があります。
生前に有効な遺言書が作成されている場合、改めて遺産分割協議をする必要がないため、
後見人を選任する必要もなく、そのまま遺言書通りに分割をすることができます。

相続人の一部が認知症のため遺産分割協議ができないという事態は、
相続人同士の仲の良さにかかわらず、どの家庭にも同じように起こりうることです。
自身が亡くなった際に家族が困るのを防ぐために、遺言書の作成をご検討されてはいかがでしょうか。

なお、いざ遺言書を作成しようと思ったときに、自身が認知症となっていると遺言書を作成できない場合があります。
遺言書の作成をご検討の方は、なるべく早い段階で一度、名駅総合法律事務所にご相談されることをお勧めします。